エテル・コフマン「アニマ」 Ethel Koffman "Anima"

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ARGENTINA アルゼンチン





すでによく知っているつもりのアーティストでも、新作発売をきっかけに過去作品やバイオグラフィーをあらためて紐解いたりすると、新しい発見があります。

シャグラダメドラ・レーベル Shagradamedra から先日新譜を発売した エテル・コフマン Ethel Koffman もそんな一人。

彼女の6年ぶりとなる待望の最新作は、真っ白いジャケットにレリーフのような蝶のシルエットが浮かび上がった美しいジャケットが印象的な "アニマ Anima"。

1975年に歌手としての活動をスタートさせたエテル(当時はエセルと記載) の作品は、残念ながら1st.アルバム "Lila"(1999)は未入手ですが、前作 "Flor Verbena" (MUNICIPALIDAD DE ROSARIO,2005)の発売当時から私の愛聴アルバムでした。
前作発売直後も雑誌にレビューを書き、2010年秋のカルロス・アギーレ氏来日直前イベントでは、アギーレ氏周辺アーティストとして、彼女のこの音源を紹介したりもしました。
ただ、当時はあまり話題になりませんでした。それは発売元がMUNICIPALIDAD DE ROSARIO=ロサリオ市というオフィシャルな機関だったことや、当時まだ彼女のようなアーティストを聴く土壌が日本に根付いていなかったことも関連していたかもしれません。流通も当時ロサリオ発のアルバムは日本に沢山は輸入されませんでした。


エテルは自身で曲づくりはしませんが、温かい安定感あるボーカルがとにかく素晴らしく、主に自身の生まれ育った街ロサリオやロサリオを内包するサンタフェ州のアーティストたちとの交流の中で作品を選び、丁寧なアルバム作りを行なっています。
ロサリオ市はアルゼンチンの第二都市(コルドバが第二番めで第三都市と言われることも)で、ロックやジャズが盛んな土地柄です。
フィト・パエスやJ.C.バグリエット、リリアナ・エレーロなど独特の音楽性をもった音楽家を多く輩出した実績もあるため、以前よりこの土地で活動する音楽家たちを総称して「ロサリオ一派」と呼ぶこともあります。
エテルの温かい声と、安定した歌唱力、長年のキャリアで培われたロックの要素やジャズの素養を感じさせた新しいフォルクローレのスタイル、といった特徴が私が彼女の作品に好感を感じる理由かもしれません。
そしてアギーレにも通じる部分=地元を離れずそこに生き活動する「地元愛」も一筋信念が通った感じを受けます。
いつも私の心の支えとなる歌声です。

今回の新作も彼女の包みこむような愛情あふれる優しい声の魅力が実に素晴らしい、心がほっこり温まるアルバムでした。

4."El gran pez"では70年代から活躍する大スター歌手、フアン・カルロス・バグリエット Juan Carlos Bagliettoとのデュエットや前述のカルロス・アギーレ(シャグラダメドラ主宰)が演奏でゲスト参加していることも特筆すべきですが、アルバム全体を彩る素晴らしいサポート陣の紹介を忘れてはなりません。
ロサリオの名門ジャズレーベルであるBlueArtRecordsからのリリースでも知られるLeonel Luquez(pf)、同BlueArtRecordsからのRumble Fish名義のアルバムが感動的で、シャグラダメドラからの名作”Luz De Agua”のギタリストとしても知られるクラウディオ・ボルサーニ Claudio Bolzani, 同じく地元ロサリオ出身のドラマー&パーカッショニスト、ハビエル・アジェンデ Javier Allende、ジャズを中心に活動する名コントラバス奏者、チャーリー・パグラ Charly Pagura(現El Umbralメンバー)といずれも強者揃い。全てエテル本人の活動基盤であるロサリオ市を中心とするサンタフェ州のメンバーで構成され、選ばれた曲の作者もほとんどが地元のアーティストという珠玉のアルバムに仕上がっています。

ロサリオとブエノスアイレスの関係は東京と大阪または名古屋?
地元アーティストのみのメンバーで構成されたバンドで、曲もアレンジも演奏も全て地方発。それでいて首都・東京のアーティストをもしのぐ、素晴らしいクオリティと個性を発揮したアルバムを生み出した・・・。

日本よりも首都と地方都市との格差がずっと大きいアルゼンチンという国では、このクオリティでコンスタンスに上質な作品を生み出すことは決してたやすいとは思えません。そういう意味では、シャグラダメドラ・レーベルのパラナー州しかり、ロサリオ市とサンタ・フェ州という地域の潜在能力、アーティストの底力しかり、と今後もこの地域のアルゼンチン音楽から目が離せません。


月刊誌"Latina" 2012年1月号(2011年12月20日頃発売)にレビュー執筆。



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Anima by Ethel Koffman
全12曲

1. MONTE MAÍZ - Hugo Fattoruso 3:51
2. MAPA DE MÍ - Jorge Fandermole / Pichi de Benedictis 3:10
3. LAS TARDES DEL SOL, LAS NOCHES DEL AGUA - Fito Páez 4:03
4. EL GRAN PEZ - Adrián Abonizio 3:17
5. AY DEL SUEÑO - Mario Benedetti / Charly Pagura 2:44
6. TRANSPARENCIA - Julián Venegas 3:41
7. CORRIENTES - Adrián Abonizio 358
8. LO QUE USTED MERECE - Jorge Fandermole 3:15
9. ME ASOMO - Olga Román 4:25
10. FARIZADA - Sandra Corrizo 2:52
11. LA FLOR DEL MAÍZ - Felipe Aldana / Alberto Callaci 2:14
12. UN DRAGÓN EN INVIERNO - Gastón Bozzano 3:06


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